スタートアップ界隈で、日本の投資環境の古い慣習を打ち破ろうという議論が本格化しています😊。長らくスタートアップの出口(イグジット)戦略は「新規株式公開(IPO)こそがゴール」という認識に偏っていました。しかし、このIPO偏重を是正し、M&A(合併・買収)やセカンダリー取引を「普通」の選択肢とすることで、海外からのリスクマネーを呼び込み、日本のスタートアップ生態系を強くしようという動きが進んでいます。東京証券取引所の改革とも連動し、スタートアップ市場にどのような変化が起きているのか、詳しく解説していきます!
🛑日本独自の課題:「上場ゴール」からの卒業
日本のスタートアップにとって、成長の象徴とされてきたIPOですが、このIPO偏重こそが、海外から見て日本の投資市場を「独特」なものにしている原因の一つだと指摘されています。
IPOの定義と「上場ゴール」の現実
IPO(Initial Public Offering)は、株式未公開企業が初めて株式市場に上場し、一般に株式を公開することです。しかし、日本のスタートアップは、他の先進国と比べても高い割合でIPOを選択するという特徴があります。
問題視されているのは、このIPOの多さだけでなく、「上場ゴール」と揶揄される現象です。これは、上場後にすぐに業績が低迷したり、上場準備費用などで利益が減ったりする企業も見られるためです。
東京証券取引所も、こうした「上場ゴールを防ぐため」に上場維持基準を厳しくする方針を打ち出しており、その影響でグロース市場の新規上場件数はすでに減少しています。市場の選別が進み、海外マネーを呼び込みやすくなるという期待も持たれています。
ここがポイント👌
「上場ゴール」は、日本のスタートアップ市場の成熟度が国際標準に達していないことを示す象徴的な課題です。東証の上場基準の厳格化は、上場を「ゴール」ではなく「通過点」とする意識を企業側に促し、市場の信頼性を高めるための強力なメッセージとなっています。
📜IPO偏重を誘発する「不平等契約」の慣習にメス
なぜ日本ではIPOに偏重してしまうのでしょうか。その背景には、日本のベンチャーキャピタル(VC)とスタートアップの間で結ばれてきた日本独自の慣行があるようです。
VCの回収期間の制約から「IPO努力義務」が生まれていた
VCはファンド満期(約10年)までに投じたスタートアップを売り抜ける必要があるため、スタートアップに対し、契約の際に「新規株式公開(IPO)の努力義務を課す」という慣行がありました。
この他にも、M&Aによる会社売却の際に初期投資家の同意を必須とする権利など、スタートアップ側に不利な「不平等条約」が結ばれるケースがあったとされています。結果として、M&Aでの売却が進めにくくなり、IPOを目指さざるを得ない状況が生まれていたわけです。
これに対し、経済産業省は、投資家が新興企業と結ぶ契約のガイドラインを改定する方針を打ち出し、M&Aも選択肢に含めるよう促すことで、国際標準に合わせた投資環境を整えようとしています。
ここがポイント👌
経産省による契約ガイドラインの改定は、日本の投資環境が抱えていた構造的な課題に切り込む重要な一歩です。この慣行が変わることで、スタートアップの経営者が資本市場の都合に縛られることなく、事業成長にとって最善のイグジット戦略を選べるようになる客観的根拠が整います。
🌍M&Aとセカンダリーを「普通」にする国際的な潮流
日本で「上場ゴール」からの卒業が叫ばれる背景には、海外ではIPOではない出口戦略が主流であるという事実があります。
M&Aは「敗北」ではなく「成長」の足がかりに
アメリカなどの海外市場では、スタートアップの出口戦略としてM&Aがメインとなっています。日本ではM&Aは「敗北」のようなネガティブなイメージを持たれることもありましたが、海外では大手企業に買収されることで、さらに大きく成長できるチャンスと捉えられています。
日本でも、M&Aが成長への足がかりとなる「スイングバイ上昇」という事例が出始めています。これは、大手企業の傘下や関連企業となり、大きな仕事や実績を作った後、改めて独立企業として新規上場を果たすケースです。
投資家同士の「事業承継」セカンダリー取引
IPOやM&Aが難しい、あるいは実現までに時間がかかるスタートアップに対しても、投資を継続させる仕組みとして「セカンダリー取引」が注目されています。
セカンダリー取引とは、初期のVCなど投資家がファンド満期などで売却したい株式を、別の投資家が買い取って引き継ぐ取引のことです。この取引が広がることで、スタートアップは、「投資家の都合」によるプレッシャーに押しつぶされることなく、マイペースに成長を続けることが可能になります。すでに大手金融機関も、セカンダリー取引専門のファンドを設立するなど、この市場の整備を進めています。
ここがポイント👌
M&Aやセカンダリー取引を「普通」の選択肢とすることは、日本のスタートアップ生態系に多様性と柔軟性をもたらします。これにより、VCのファンド満期という時間的な制約から解放され、スタートアップの長期的な成長にフォーカスできるようになるという確固たるメリットがあります。
この記事をまとめると…
- 日本のスタートアップ市場では、IPO偏重による「上場ゴール」問題が指摘されており、東京証券取引所も上場維持基準を厳格化しています。
- IPO偏重を誘発してきたVCによる「IPOの努力義務」などの日本独自の不平等な慣行を改めるため、経済産業省がガイドライン改定を進めています。
- M&Aを成長への足がかりとする「スイングバイ上昇」や、投資家同士が株式を引き継ぐセカンダリー取引を「普通」の出口戦略とすることで、日本のスタートアップ投資環境を国際標準化し、海外マネーを呼び込もうという流れが加速しています。
配信元情報
- 番組名:ながら日経
- タイトル:『上場ゴール』卒業宣言!M&A・セカンダリーで日本のスタートアップを国際化へ
- 配信日:2025-10-03


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