ドイツで開催された世界的なゲームイベント「Gamescom」の話題を中心に、最新のゲーミングPCとGPU技術の動向を深掘りします。次世代のGeForce 5000番台の登場が示唆される中、18インチの巨大なゲーミングラップトップや、Thunderbolt 5によるE-GPU(外付けGPU)の進化が注目されています。高性能なローカルLLM(大規模言語モデル)の動作も視野に入れた、モバイルデバイスの「高火力」化はどこまで進むのか? 熱狂的なゲーマーやヘビーユーザーの動向から、ハイエンドPC市場の課題と未来を考察します。
ゲーミングPCの最新トレンド:大型モバイルとE-GPUの復活
ここ数年のゲーミングPCのトレンドとして、大型化と性能の極限追求が見られます。
E3の代わりとなるGamescomと次世代GPU
世界規模のゲームイベントであるGamescom(ケルンで開催)は、E3が事実上消滅した今、世界中のパブリッシャーやデベロッパーが集まる重要な場となっています。ニンテンドースイッチ2の技術がお披露目された場所でもあり、新しいGPUや半導体技術が登場する場所としても注目されます。
今年は、GeForce 5000番台の登場が期待される中、その応用技術や次世代のゲーミングPCが展示されました。
18インチラップトップの登場と電源問題
最近では、Razerが18インチという巨大なラップトップ「Razer Blade 18」を発売するなど、モバイルPCの大型化が進んでいます。これは、高性能なGPU(モバイル版5090など)を搭載し、本体だけで280Wもの電力を必要とするためです。
ユーザーの中には、MacBook Pro M4 Maxに対抗できる演算能力や、GPT OSS 120Bのような超大型LLMを動かすために、このような高額で高性能なモバイルPCを求める層がいます。これは、デスクトップ級の性能をいかに持ち運ぶかという、ゲーミング市場とAI技術市場の共通した課題を示しています。
感じたポイント👌: 18インチは持ち運びを前提としていない「モバイル・デスクトップ」という新しいカテゴリーですね。高額(最高で5000ドル)であるにもかかわらず、一部のヘビーユーザーを熱狂させる極端な性能志向が伺えます。
Thunderbolt 5によるE-GPUの可能性と残る課題
かつてブームとなり、その後「終わった」とまで言われたE-GPU(外付けGPU)の世界ですが、最新技術によって再び注目され始めています。
Thunderbolt 5がもたらす高速伝送
E-GPUボックスは、Thunderbolt 5の登場により、再び息を吹き返そうとしています。Thunderbolt 5は、従来の規格を大きく超える120Gbpsと40Gbpsの非対称高速モードでのデータ伝送が可能になると言われています。これにより、フルサイズのデスクトップGPU(例:5090)を外部ボックスで動かすという、理想的な環境の実現が期待されています。
性能低下の「不可解な現象」
しかし、E-GPUの世界にはまだ大きな技術的課題が残っています。松尾さんの知人が行った測定では、高性能なGPU(5090など)をE-GPUボックスで動かした場合、性能が異様に低くなる現象が確認されました。
この原因として、PCI Expressのやり取りのバッファーを可変にする「リサイザブルBAR(Resizable BAR)」が効いていない可能性や、GPUメーカー側(NVIDIAやAMD)が外付けGPUボックスでのドライバーテストを十分に行っていないことが挙げられています。
E-GPUは、動くには動くものの、「癖があって法則性が見えない」という、不安定な状態にあるのが現状です。
感じたポイント👌: E-GPUは、デスクトップGPUをモバイルで使えるという魅力がある一方、ケーブルが50cm程度しか伸ばせないという物理的な制約もあります。高性能化の追求が、最終的にユーザーにとっての実用性を損なうというジレンマは、AI時代のハードウェア開発においても重要な論点となりそうです。
AIとSLM(スモール言語モデル)の進化
高性能なゲーミングハードウェアが求められる背景には、LLM(大規模言語モデル)をローカルで動かしたいという需要の高まりがあります。
モバイルLLMの進化:SLMとLMスタジオ
LLMのローカル実行は、MacBook Pro M4 Maxの128GBユニファイドメモリなど、極めて大容量のメモリを必要とします。しかし、モバイルデバイス(Androidなど)で動かす場合、メモリ容量の制約から、SLM(スモール言語モデル)を使うことになります。
松尾さんは、16GBメモリのAndroidデバイス(OnePlus 12)を購入し、ローカルLLM(LM)の検証を進めています。
- 動作状況:16GBメモリでは、期待されたGPT-OSS 20Bはクラッシュして動かず、3B~7B(5GB程度)のモデルが最も安定して動作する「スイートスポット」であることが判明しています。
- LMスタジオの存在:松尾さんは、ローカルでLLMを動かすためのアプリを「LLMスタジオ」ではなく、実際は「LMスタジオ」であると指摘しています。これは、モバイルデバイスで動くモデルが「ラージ(L)」ではないことを示唆しているかもしれません。
AI時代の価値転換
高性能なGPUは、単なるゲームのレンダリングだけでなく、ローカルLLMの高速演算のためにも必須となっています。モバイルデバイスの性能が向上し、AI処理能力が高まる一方で、単純なコーディング作業などはAIが代替しつつあるため、若手人材は「AIに適合した、より社会や人間行動を学ぶ能力」へと価値を変換する必要がある、という論点とも深く関わってきます。
感じたポイント👌: ハードウェアが急速に進化しても、それを動かすアプリの出来や、ドライバーの対応状況が追いつかないという問題は、E-GPUの例(性能低下)や、LLMの例(クラッシュ)に共通しています。ハードウェアとソフトウェアの協調の重要性が、改めて浮き彫りになりました。
この記事をまとめると…
- ゲーミングPC市場では、次世代GPUの登場を背景に、18インチの巨大なモバイルデスクトップや、Thunderbolt 5を利用したE-GPUなど、極限の性能を追求する動きが顕著になっています。
- しかし、E-GPUはドライバーの問題から性能が安定しないという技術的な課題も残ります。
- また、ローカルAI処理の需要が高まる中、モバイルデバイスのメモリ(16GB Androidなど)では、まだ高性能なLLM(20Bなど)の動作は難しく、3B〜7B程度のSLMが現実的な選択肢となっています。
- ハイエンドハードウェアの進化は、ローカルLLM時代に向けた布石でもありますが、その真価を発揮するには、ソフトウェア側のチューニングが不可欠です。
配信元情報
- 番組名:Backspace.fm
- タイトル:クラウドゲーミングがローカルゲーミングPCを超えた!GeForce Nowの進化がスゴイ! ep619
- 配信日:2025-09-08


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