企業のロゴが「時代の鏡」であることをご存知ですか?👀 イギリスの高級車ブランド「ジャガー」が超高級電気自動車(EV)ブランドへの転換を図り、ピンクのロゴを打ち出しましたが、これが大炎上!なぜ高級ブランドは、社会的メッセージを優先して失敗したのでしょうか?🤔
今回の配信では、ジャガーの事例を反面教師に、今世界で起きている「伝統回帰」という価値観の揺り戻しについて深掘りします。ロゴはブランドイメージを形作り、社会に価値観を伝える重要なツールだからこそ、「時代の精神」(zeitgeist)を読み違えると、大きな代償を払うことになります。この記事を読めば、ブランド戦略と世相の変化がスッキリわかりますよ👍。
今回の配信内容🎧
今回の配信では、イギリスの高級車ブランドであるジャガーが、多様性を強調したリブランディングを行った結果、批判の的となり物議をかもした事例を解説します。この事例を通じて、ブランドロゴの変更が映し出す欧米の「時代の空気」として、シンプル路線からクラシックな伝統を打ち出すデザインへの回帰が進んでいる現状を分析します。また、ロゴ変更における「消費者の愛着」と「時代の精神」とのバランスの重要性、そして過度な社会的メッセージ発信の危険性(美徳シグナリング)についても深掘りします。
時代精神を読み違えたジャガーの失敗
ピンクのロゴと「車なし」の動画が物議をかもす
イギリスの高級車ブランドジャガーは、去年11月にブランドロゴを刷新し、超高級電気自動車ブランドへの転換を狙ったリブランディングを試みました。
しかし、このリブランディングが物議をかもしたと指摘されています。ロゴは、大文字と小文字が混在したデザインに変更され、象徴的なジャガーの絵(跳躍するジャガーのエンブレム)もロゴから切り離されました。
特に話題となったのは、同時に公開されたイメージ動画です。背景がピンクでかなりガラッと変えられただけでなく、車は一切登場しませんでした。代わりに、火星のような風景の中に様々な人種の中性的なモデルが登場するという、「なかなか理解が難しい世界観」だったそうです(聞き手も「車メーカーのようには見えませんよね」とコメントしています)。
ブランドの本質を見失った「美徳シグナリング」
このジャガーの試みに対しては、EVで競合するテスラのイーロン・マスク氏もX(旧Twitter)で「車売ってるんだよね」とチャチャを入れるなど、大きな話題となりました。
FT(フィナンシャルタイムズ)の記事の筆者であるコラムニストは、ジャガーのこのリブランドが「社会的メッセージが優先されてブランドの本質を見失った事例」として話題になったと指摘しています。
さらに、ジャガーのリブランドは、「自分が道徳的に正しいことを指摘する」行為を指す「美徳シグナリング」だったとの指摘もされています。結果、ジャガー・ランドローバーのCEOは、リブランドと関係性は明確ではないものの、7月末に退任を発表するなど、大きな波紋を呼びました。
ここがポイント👌
ジャガーは、ロゴ刷新時にピンクを背景に採用し、車を一切登場させない多様性を強調したイメージ動画を公開しましたが、これは社会的メッセージが優先されブランドの本質を見失った事例として批判を集めました。
クラシックデザインへの「伝統回帰」が示す時代の空気
シンプルなロゴからクラシックなデザインへの揺り戻し
ジャガーが時代精神を読み違えたとされる一方で、他の高級ブランドや企業は、逆の方向へ動いています。
欧米では、2008年の金融危機以降、ブランドロゴは「当たりさわりのないフォントを使ったシンプルなデザイン」が主流でした。高級ブランドのサン・ローランやバーバリーなども、このシンプル路線を採用していました。これは、金融危機の後の社会的な不満を反映し、「贅沢をそれとなく、こっそり行う」という風潮に合わせた個性を抑えたロゴでした。
しかし、ここに来て、これらのブランドはクラシックなデザインや装飾がついたフォントに戻しています。価値観が激しくぶつかり合う時代になり、ブランドは伝統を打ち出しながら豪華さなどを演出するようになってきたのです。
ペプシも小文字から「力強い大文字」へ
高級ブランド以外でも、この「伝統回帰」の動きが見られます。炭酸飲料のペプシは、小文字のロゴから昔使っていた大文字のロゴに戻しました。また、赤と青の円も14年ぶりにクラシックで対称的なデザインになりました。
小文字のロゴが「柔らかくフェミニンな印象」を与えるのに対し、大文字は「力強くマッチョな印象」を与えます。これは、今世界中でリベラルな主張に逆風が吹いているという時代精神を映したものだと、記事のコラムニストは指摘しています。
ここがポイント👌
高級ブランドやペプシは、金融危機後に主流だったシンプルな小文字ロゴから脱却し、クラシックなデザインや力強い大文字へと回帰しており、これはリベラルな主張への逆風と、ブランドが伝統を打ち出す必要性を示しています。
ロゴ変更に求められる「時代の精神」とのバランス
企業のメッセージと「時代の精神」(zeitgeist)
企業がロゴを変更するという行為は、ブランドの新しいメッセージを打ち出したいという明確な意図があります。しかし、そのメッセージは、「消費者の愛着」と「時代の精神」(zeitgeist:ドイツ語で時代を支配する精神や知性、感情の総和)のバランスを取ることが非常に重要です。
ジャガーの事例は、社会的メッセージを優先しすぎた結果、時代精神を読み違えたことの失敗例として挙げられています。
FTのコラムでは、世の中が保守に傾いている背景として、リベラル側の問題点も掘り下げられています。それは、多様性を謳いながら、実はそれ以外の考え方に非寛容的だったのではないかという指摘です。このような背景から、ジャガーが取ったような「美徳シグナリング」的な戦略が、かえって消費者の反発を招いたと考えられます。
日本が直面する「効率化」の揺り戻しとの共通点(編集部の視点)
この「過度なリベラリズムや効率至上主義からの伝統回帰」という現象は、インフラや産業の分野で日本やイギリスが直面している課題とも本質的に共通しています。
例えば、イギリスの鉄道再国有化の動きは、利益を重視しすぎてインフラ投資や保守を怠った民営化(新自由主義)の失敗が原因です。水道大手も破綻の危機に瀕するなど、効率化の原理が社会基盤の維持という本質を見失った結果、国が再び伝統的な運営方式に戻りつつあります。
また、日本の稲作においても、価格維持を目的とした過去の生産調整政策が、競争力の強化を阻害してきました。現在、専門家は、収穫量を増やしてコストを下げ、輸出に活かすという発想の転換を求めています。
これらの事例は、いずれも、一時的な主義主張や効率を優先しすぎると、伝統や持続可能性という基盤が揺らぐという共通の教訓を示しています。企業のロゴ変更も、ただ流行を追うのではなく、ブランドが持つ伝統や本質的な価値を、いかに現代の時代精神と調和させるかが問われています。
ここがポイント👌
ロゴ変更の成功には、消費者の愛着と**「時代の精神(zeitgeist)」のバランスが不可欠であり、ジャガーの失敗は、美徳シグナリングが反発を招いた事例であり、インフラ維持における新自由主義の限界といったグローバルな揺り戻しとも共通しています。
この記事をまとめると…
イギリスの高級車ブランドであるジャガーは、多様性を強調するためにピンクを背景としたロゴ刷新と、車を登場させないイメージ動画を公開しましたが、ブランドの本質を見失ったとして批判が集まりました。この失敗は、過度な社会的メッセージ発信(美徳シグナリング)が、リベラルな主張に逆風が吹く時代の空気(zeitgeist)と合わず、消費者の反発を招いたものです。現在はクラシックで力強いデザインや大文字へと回帰しており、これは伝統や豪華さを打ち出す価値観への揺り戻しを示しています。企業はロゴ変更を通じて新しいメッセージを打ち出す際、消費者の愛着と時代の精神のバランスを取ることが不可欠です。
配信元情報
- 番組名:日経プライムボイス
- タイトル:ピンクのジャガーが批判の的に、ブランドロゴ変更は何を映す?
- 配信日:2025-08-27

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