自動車の半導体「SoC」に攻め入る中国勢、米中覇権争いの実力は?

交通・インフラ

自動車の「頭脳」にあたる半導体市場で、中国勢が急速に勢力を伸ばしているのをご存知ですか?
かつては安価だが性能では欧米に劣ると見られていた中国製チップが、今やアメリカの巨大メーカーを猛追し、性能面でも評価されるように進化しています。

今回の配信では、この自動車向け先端半導体SoC(システム・オン・チップ)市場で起きている劇的な変化と、
その裏側にある米中覇権争いのリアルな実態を解説!

この記事を読めば、EV時代の技術トレンドと日本の自動車産業への影響がスッキリわかりますよ。

今回の配信内容🎧

今回の配信では、中国メーカーが自動車の頭脳である先端半導体SoC(システム・オン・チップ)市場で台頭している現状について、
日経テックフォーサイトの久目秀吉編集長が解説します。

これまではアメリカやヨーロッパ勢が優位だったこの市場において、中国勢が性能面でも評価を高めている具体的な事例や、
日産・ホンダといった日本メーカーへの影響、そして今後の市場動向の鍵を握る米中間の地政学的な対立について深掘りします。


自動車の頭脳「SoC」市場で起きる地殻変動

世界の半導体業界では、長らくアメリカやヨーロッパ勢が技術的な優位性を保ってきました。
特に中国製の半導体といえば、安い代わりに性能では一歩劣るというのが一般的な見方でした。

しかし、その状況が今、大きく変わりつつあります。
自動車の頭脳にあたる先端半導体SoC(システム・オン・チップ)が性能面でも評価されるようになり、
先行していたアメリカの半導体大手クアルコムなどを猛追しています。

これにより、半導体業界の勢力地図が塗り替えられそうです。


SoCとは? EV時代に不可欠な技術

この競争の鍵を握るSoC(システム・オン・チップ)とは、
CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理装置)、メモリーなどを一つのチップにまとめた半導体の略称です。

SoCを採用するメリットは、小型化を図りつつ、処理能力を大幅に高められるという点にあります。

自動車向けでは、このSoCが、自動運転技術(ADAS)やタッチスクリーン技術を制御し、
ナビゲーションやエンタメ機能(インフォテインメント)を高める用途で使われています。

EV化や自動運転化が進む現代の自動車の進化に、SoCは不可欠な「頭脳」の役割を果たしているのです。

ここがポイント👌

中国メーカーは自動車の頭脳である先端半導体SoC市場で性能面での評価を高め、
先行するアメリカ勢を猛追し、勢力地図を塗り替えようとしています。

日経プライムボイスが中国SoCの台頭と米中覇権争いを3分解説。EV時代の技術トレンドを紹介。
Apple Podcast|自動車の半導体「SoC」に攻め入る中国勢、その実力は?

日経クロステック編集長が語る自動車向けSoCの最新動向と中国企業の実力。
100i.net|自動車の半導体「SoC」に攻め入る中国勢、その実力は?

中国勢の具体的な実力:日本メーカーとの連携も

ホライゾンロボティクス:低コストADASで躍進

注目企業の一つが、去年上場を果たしたホライゾンロボティクスです。
同社は、ドライバーの運転操作を支援するADAS(先進運転支援システム)自動追従や車線維持といった機能を、低コストで実現しました。

2025年5月の上海モーターショーでは、ドイツの自動車部品メーカー採用手であるボッシュが、
ホライゾンロボティクスのSoCを採用したADASを発表するなど、すでに世界的な自動車部品メーカーとの連携が進んでいます。


セミドライブ:タッチスクリーン向けで日本メーカーと連携

もう一つの注目企業、セミドライブは、車載のタッチスクリーン向けのSoCを手掛けており、世界進出を狙っています。

特筆すべきは、ホンダや日産自動車の中国合弁が、既にセミドライブのSoCを採用している点です。
これは、安くて性能も良い中国製のSoCが、グローバルなサプライチェーンに着実に食い込んでいることを示しています。

ここがポイント👌

中国勢ではホライゾンロボティクスがADASを低コストで実現し、
セミドライブはタッチスクリーン向けSoCでホンダや日産の中国合弁に採用されるなど、具体的な実績を積み重ねています。


米中覇権争いという地政学的な逆風

政治リスクがビジネスを左右する

安くて高性能な中国製SoCは、今後どんどん世界に広まっていきそうに見えます。
しかし、その成長の前に立ちはだかる最大の壁が、アメリカと中国の対立です。

関税などの米中対立が激化するのを背景に、中国製部品の採用を避ける自動車メーカーも出てきているのが実情です。
特に、巨大市場であるアメリカ市場では、中国製SoCの採用は難しい状況にあると指摘されています。

これは、たとえ技術的な優位性やコストメリットがあったとしても、
地政学的なリスクがサプライヤー選定における最重要項目になるという、現代のグローバルビジネスの難しさを示しています。

日本やヨーロッパの自動車メーカー各社が、この政治リスクを考慮に入れながら、今後どう動くのかに注視が必要です。

(編集部注: 地政学的なリスクは、自動車部品のサプライチェーン全体に影響を与えます。
例えば、日本製鉄が米国の鉄鋼メーカーを買収した際も、トランプ関税の影響を受けずに現地生産できるという強みが追い風になっており、
重要部品の供給元を「どこに置くか」が事業の成功を大きく左右する時代となっています。)

ここがポイント👌

中国製SoCの最大の懸念は米中対立であり、関税や地政学的リスクを背景に、
特にアメリカ市場では中国製部品の採用を避ける動きが広がっています。

ホライゾンロボティクスが上海モーターショーでADAS向けSoCを発表。ボッシュが採用。
日経テックフォーサイト|中国SoCの実力とグローバル連携

セミドライブがホンダ・日産の中国合弁にSoCを供給。タッチスクリーン向けで存在感。
日経新聞|セミドライブの車載SoCが日本メーカーに採用

米中対立が自動車部品の調達に与える影響。地政学リスクがサプライチェーンを左右。
日経ビジネス|米中覇権争いとEV部品の地政学リスク

EV市場における日本勢の「切り札」と比較

全固体電池と電磁鋼板の優位性

EVの性能を左右する電池市場では、現在中国勢がリチウムイオン電池のシェアで大きくリードしていますが、
日本車メーカーは全固体電池を「逆襲の切り札」と位置づけています。

全固体電池は、エネルギー密度が高く航続距離を伸ばせ、発火しにくいという高い安全性を持つ次世代電池です。
トヨタと出光は、コスト高の課題を解決するため、廃車EVの電池を再利用する仕組みを構築し、実用化を急いでいます。

また、EVモーターのコアに使われる電磁鋼板についても、日本製鉄(日鉄)が「虎の子」の技術を持ち、
高い磁気特性と価格競争力で優位に立っています。

日鉄は、技術流出のリスクを避けるため、海外事業では電磁鋼板の技術投入に慎重でしたが、
USスチール買収を通じて、ついにアメリカ市場でGMやフォードとの直接取引を進めています。

SoCは中国、電池と素材は日本というように、EVのサプライチェーンにおける技術ごとの覇権争いの構図が今後さらに明確になっていくでしょう。

ここがポイント👌

日本勢は電磁鋼板や全固体電池といったEVの重要部品で優位性を持ちますが、
中国SoCの台頭は、日本やヨーロッパの自動車メーカー各社に、技術力と地政学的リスクを天秤にかける難しいサプライヤー選定を迫っています。

トヨタと出光が全固体電池の再利用と実用化を加速。EVの安全性と航続距離向上へ。
日経新聞|トヨタと出光、全固体電池の実用化加速

日本製鉄がUSスチール買収で電磁鋼板技術を米市場へ展開。GM・フォードと取引開始。
日経ビジネス|日鉄、電磁鋼板で米EV市場に攻勢


この記事をまとめると…

自動車の頭脳である先端半導体SoC市場では、ホライゾンロボティクスやセミドライブといった中国勢が性能面で評価を高め、アメリカ勢を猛追しています。

SoCは自動運転や車載エンタメに不可欠な技術であり、セミドライブのSoCは既にホンダや日産の中国合弁に採用されるなど、具体的な実績を上げています。

しかし、中国製SoCの採用拡大には、米中対立による地政学的リスクという大きな壁が存在しており、
特にアメリカ市場では中国製部品の採用を避ける動きが見られます。

日本の自動車メーカーは、このリスクを回避しつつ、電磁鋼板や全固体電池といった独自の強みをどう活かしてEV競争を勝ち抜くかが問われています。


配信元情報

  • 番組名:日経プライムボイス
  • タイトル:自動車の半導体「SoC」に攻め入る中国勢、その実力は?3分解説【NIKKEI_Tech_Foresight_×_NIKKEI_PODCAST】
  • 配信日:2025-07-02

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