医療現場×生成AIの最前線:医師が語る活用術と教育の課題

AI・テクノロジー

🏥 医療現場における生成AIの活用は、私たち一般ユーザーにとっても非常に興味深いトピックです。高度な専門性が求められる現場で、AIがどのように使われ、どのような課題に直面しているのでしょうか?
本記事では、現役の医師であり、書籍『医師による医師のためのChatGPT入門2』の著者である大塚敦先生へのインタビューを基に、医療現場におけるAI導入のリアルな実態を解説します。論文執筆の劇的な効率化から、AI時代の教育が抱える深刻なジレンマまで、AIネイティブ世代の未来を考える上で重要な洞察に満ちた内容です。


医療の専門家が語る!AIとの衝撃的な出会いと出版の経緯

近畿大学医学部皮膚科学教室の教授を務める大塚先生は、もともとプログラミングの経験があったわけではなく、ChatGPT 3.5が日本で出始めた頃に面白がって使い始めた一人だったそうです。

「ファミコン登場以来」の熱狂:GPT-4が実用レベルに

先生が特に感動したのはGPT-4が登場した時でした。ChatGPT 3.5の段階では「実用レベルではなかった」と感じていたものの、GPT-4が出てからは「なんてすごいものが世の中に出たんだろう」と熱中し、その熱中具合は「スーパーファミコンとかファミコンの登場以来」だったと語ります。

AIの性能向上を実感した先生は、これを研究、臨床、教育といった医師の仕事にどう活かせるか、手探りで利用を続けたといいます。

講演会でアトピーの話より盛り上がったAIトピック

先生が書籍を執筆するに至ったきっかけも、このAIへの熱狂にありました。
専門であるアトピー性皮膚炎に関する医師向け講演会で、時間が余った際に「最近生成AIを使っていて、こんなふうに使っています」と話したところ、アトピーの講演内容よりも聴衆が盛り上がってしまったというのです。

この反応を見て、先生は医師たちがチャットGPTに抱く関心の高さと、その使い方を学ぶための「手引き」となる本がまだほとんどないことを痛感。そこで「説明するのも面倒だし、自分で書いたほうが早い」という発想に至り、2024年1月に執筆を開始しました。

結果として、AIの進化速度があまりにも速いため、書籍『1』は企画から出版まで約4~5ヶ月、『2』は3~4ヶ月という異例のスピードで完成しています。

感じたポイント👌:医療の第一線で活躍される専門家が、専門外の技術に「ファミコン以来の熱中」を感じるというのは、AIがもたらすインパクトの大きさを物語っていますね。

医療現場で「刺さる」AI活用術:論文執筆効率が劇的に向上

実際に医療の現場で特に評判が良かったAIの活用事例として、先生は「論文の執筆」を挙げました。

大学で働く医師や研究者にとって、論文や教科書といった書物が非常に多く、特に国際的に活躍するためには英語での書き物が必須となります。しかし、ネイティブではないため、英語での論文執筆には多大な苦労が伴います。

英語力を超える英作文が容易に

これまでの機械翻訳(DeepLなど)では不完全で手直しが必要でしたが、ChatGPTの登場により、「自分の英語力を超えるような英作文」が簡単に出力されるようになりました。これにより、英語で論文を書くプロセスが劇的に効率化され、「こんなに簡単に英語で論文が書けるようになるの?」と、英語で執筆する多くの医師が驚いているそうです。

また、書籍には当直のシフト組みや論文の理解にAIを活用している事例も書かれています。

感じたポイント👌:高度な専門知識に加え、アカデミックライティングという負荷の高いタスクがAIによって代替されることで、医師や研究者が本来注力すべき研究や臨床に時間を割けるようになるのは、大きな進歩だと感じました。

AI時代における最大の課題:「ハルシネーション」と教育のジレンマ

AIの導入が進む一方で、大塚先生は教育面での深刻な課題を指摘しています。

AIネイティブ世代が抱える「最後の5%」を見抜けないリスク

若手医師や大学院生は、論文の型や英語の書き方を時間をかけて指導教官の添削を受けながら習得してきました。しかし、生成AIが登場したことで、この技術を学ばなくても「英語を書けてしまう」という状況が生まれています。

問題は、生成AIには常にハルシネーション(AIの嘘)がつきまとうこと。新人がChatGPTを使って95%クオリティの文章を簡単に作成できてしまう状況に対し、「最後に混じる5%の誤りを見抜けない」というリスクが懸念されています。

PCやワープロ登場時とは異なる、AI時代の学習法

先生はこの状況を、パソコンやワープロが登場した際の「バカになる」議論と比較しつつも違いを強調しました。
以前の技術論争では、義務教育で漢字を学んでいるため、ワープロを使っても間違いに気づけました。
しかしAIが初めからできてしまう技術は、「社会人になってから身につける技術」であり、苦労して学んでいないと誤りを判別できない可能性があるのです。

この「AIネイティブ」世代への教育についてはまだ答えがなく、「AIと共に生きるための新しい学習法」を社会全体で考えていく必要があると結論づけました。

感じたポイント👌:「95%の正解」を簡単に出せるようになった今、残りの「5%の誤り」を見抜く能力こそ、人間が今後価値を発揮するために最も重要になる視点だと改めて考えさせられました。


この記事をまとめると…

  • AIとの出会い: 近畿大学医学部教授の大塚敦先生は、ChatGPT 4の登場に「ファミコン登場以来」の熱狂を覚え、医師業務への活用を模索。
  • 出版の経緯: 医師向け講演会でAIの話題が盛り上がり、専門分野に特化した手引きがなかったため『医師による医師のためのChatGPT入門2』を異例のスピードで執筆。
  • 現場の活用事例: 最も「刺さった」活用法は英語論文執筆の効率化。AIが自分の英語力を超える英作文を生成し、研究者の負担を軽減。
  • 最大の課題: AIが生成するハルシネーション(嘘)と、AIネイティブ世代の教育問題。基礎的な学習をAIによってスキップする危険性が指摘されている。

配信元情報

  • 番組名:AIロボシンク
  • タイトル:【インタビュー】書籍「医師による医師のためのChatGPT入門2」の著者である大塚先生に話しを伺いました
  • 配信日:2024-12-03

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