夜だけ水質が悪くなる水槽の謎【続：技術ウミガメのスープ】驚きの真相

技術トラブルは、しばしば常識や直感に反する不可解な現象を引き起こします🤯。「技術ウミガメのスープ」とは、そのような謎めいた状況を前提条件の確認（イエス/ノーの質問）を繰り返して真相にたどり着く、技術界隈特有の推理ゲームです。

本記事では、実際にあった不可解なトラブル事例から、特に「夜になると水質が悪化する研究所の水槽」の謎を取り上げます。一見すると非科学的なこの現象に潜む、物理的な脆弱性と研究員の「普通の行動」の意外な関係とは？

導入—技術ウミガメのスープの新たな問題

技術界隈では、不都合が起きた際に原因を切り分けて考える習慣があります。その結果、前提条件を疑わなければたどり着けないような、ウミガメのスープのような不具合が発生することがあるのです。リスナーから寄せられた今回の問題は、まさにそんな一問でした。

ウミガメのスープは、一見不具合な状況をもとに、イエス/ノーの質問を繰り返して正解にたどり着く遊びです。今回扱うのは、ある研究所で夜になると水質が悪くなるという、一見非科学的な謎です。

感じたポイント👌：技術者たちが日常的に行う「デバッグ」の過程で生まれるミステリーこそ、技術ウミガメのスープの醍醐味ですね。

研究所で発生したこの現象は「夜になると水質が悪くなる」というもので、朝になると水質は良くなるという周期性を持っていました。

質問を重ねた結果、以下の事実が判明しました。

水の電気を通しやすさ（工学系では銅電律と呼ばれることが多い）を測る銅電律計（電気伝導率計）という機器が、水質を判断する基準になっていました。

ここで重要なのは、純水は電気を流さない（絶縁体）という科学的な事実です。中学理科で習う基礎知識ですが、日常で接する水道水にはイオンが含まれるため電気をよく通します。しかし、純粋な水にはイオンがないため、電気は流れないのです。

つまり、銅電律計が水質の悪化（電気の通しやすさの上昇）を示しているということは、純水の中に何らかのイオンが溶け込んでいることを意味します。

この変化の原因は、ラボのメンバーの行動が関係していました。ただし、彼らが水を変化させようという意図は持っておらず、普通のルーティーンが影響を及ぼしていたのです。

質問では、顕微鏡やビーカー、フラスコ、アルコールランプなど、様々な実験器具が原因ではないことが確認されました。原因は、別の計測機器の設置方法にありました。

【真相】 水質を測る銅電律計の値が夜だけ悪化していた原因は、作業員が仕事後にペーハー計（PH計）を銅電律計の隣に置いて帰っていたことでした。

ペーハー計は、計測のために微量の塩化カルシウム水溶液などの塩類をにじみ出して測る構造になっていました。夜になり、研究所で純水の使用量が極端に減ったタイミングで、ペーハー計からにじみ出た超微量の塩類を銅電律計が検出してしまったのです。

純水は本来イオンを含まないため、この超微量な塩類の検出によって電気の通しやすさ（銅電律）が急激に上がり、「水質が悪化した」とセンサーが誤って判断したのでした。

感じたポイント👌：夜間に純水の使用が減ったタイミングで影響が出るとは、時間帯による環境変化（ヒューマンファクター）が技術システムに影響を与える典型例ですね。まさか別の計測機器が原因とは、エンジニアが原因究明に時間を要したのも納得です。

「技術ウミガメのスープ」として取り上げた、夜だけ水質が悪くなる水槽の謎の真相は、以下の通りでした。

この事例は、技術トラブルの原因が、機器の故障ではなく、別の機器の物理的な配置という「人為的なミス」に起因する、ウミガメのスープの黄金パターンであることを示しています。