生成AIの進化が止まりません。チャットGPTなどのツールが登場して以来、「AIが自分の仕事を奪うのではないか」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか😟。しかし、世界の経済学者の分析によると、「仕事が消える」という議論は、「丸でありバツ」、つまり単純な答えでは済まされないようです。今回の配信では、この生成AIと雇用の未来に関する3つの疑問について、世界の経済学者の知見を基に徹底解説!この記事を読めば、AI時代の働き方の変化と、企業や政府が進めるべき対策がスッキリわかりますよ👍。
今回の配信内容🎧
今回の配信では、デジタル技術に関わるルールや動向について情報発信する日経デジタルガバナンスの中西豊樹編集長が、アメリカのエール大学経営大学院の上竹幸介教授の寄稿文をもとに、生成AIと働き方に関する3つの疑問について解説します。「働き方は変わるのか?」「雇用は減るのか?」「経済に大きな影響を与えるのか?」というテーマについて、マイクロソフトやリンクトインの分析データ、ノーベル経済学賞受賞者などの見解を引き合いに出しながら深掘りします。
1. 生成AIが働き方と雇用に与える影響
生成AIはすでに私たちの働き方に大きな変化をもたらしています。中西編集長は、リスナーに向けたクイズ形式で、AIと雇用の関係に関する世界の経済学者の見解を紹介しました。
疑問1: 生成AIで働き方は変わる?(正解は〇)
この疑問に対しての正解は「〇」です。
マイクロソフトが、自社のAIシステム「コーパイロット」を導入した大企業66社を分析したところ、メール作成時間がおよそ30%削減され、社員が効率的に働けるようになったことが裏付けられました。
しかし、注意点もあります。中西編集長は、「会議に使う時間など組織の構造から変えなければ、大きな変化にはつながらない」と補足しています。つまり、AIがもたらす効率化の恩恵を最大限に受けるためには、単にツールを導入するだけでなく、企業側が業務プロセスや組織構造そのものを見直す必要があるということです。
ここがポイント👌
生成AI(コーパイロットなど)の導入により、メール作成時間がおよそ30%削減されるなど、働き方の効率化は進みますが、組織の構造自体を変えなければ大きな変化にはつながりません。
疑問2: 生成AIで雇用は減る?(正解は〇であり×)
この疑問に対しては、少しずるいけれど「〇であり×」が正解だとされました。
雇用への影響は、職種や市場によって二極化していることが世界のデータから示されています。
- 減少する雇用:短期雇用の労働市場、特にフリーランスのコピーライティングなど、テキスト生成系の職種において、新規採用が減少しました。
- 増加する雇用:一方で、リンクトインの分析によると、コーパイロットが市場に投入されてから、プログラマーの採用が増えていることが分かりました。
中西編集長は、新聞記者の立場を例に挙げ、「AIに負けないように独自ニュースをしっかり書くことが大事」だと述べており、AIが代替しにくい独自の価値提供が重要になることを示唆しています。
ここがポイント👌
生成AIは、コピーライティングなどのテキスト生成系職種では新規採用の減少につながる一方、プログラマーの採用は増加しており、雇用への影響は職種によって増減どちらにも影響が出ています。
2. 経済全体へのインパクトと今後の課題
疑問3: 生成AIは経済に大きな影響を与える?(正解は×)
この疑問に対する正解は「×」でした。この答えは、多くのリスナーにとって驚きかもしれません。
ノーベル経済学賞を受賞したマサチューセッツ工科大学(MIT)のアセモグル教授は、今後10年間の生成AIによる経済全体の生産性の増加は、最大でも0.66%と推計しています。
アセモグル教授は、AIの適用が難しい分野があることを理由に挙げています。それは、客観的な評価が難しいタスクへのAIの適用は難しいという見解です。
ただし、この点についても意見は分かれています。同じMITのオーター教授は、これまでスキルの低かった労働者の生産性を上げられるとして、アセモグル教授の見解に反論しています。
このように、生成AIが経済全体にどれほどのインパクトをもたらすかについて、世界の経済学者の間でも意見が二分されているのが現状です。
ここがポイント👌
ノーベル経済学賞受賞者であるアセモグル教授は、生成AIによる今後10年間の経済全体の生産性増加は最大0.66%。スキルの低い労働者の生産性向上に貢献するという反論も出ています。
3. 企業と政府に求められる「仕組みづくり」
経済学者の間でも評価が割れる中で、私たちや企業は何をすべきでしょうか。
中西編集長は、仕事の有り様が変わるのは確かであるとして、企業や政府に対し、生成AIの普及を受け身で待つのではなく、能動的な対応を求めています。
仕事を補完し生産性を向上させる仕組みづくり
企業や政府が進めるべきなのは、AIを仕事の「敵」と見なすのではなく、仕事を補完し、生産性を向上させるような「仕組みづくり」です。
これは、単にAIツールを導入するだけでなく、AIとの共存を前提とした新しい働き方、評価制度、そして組織のあり方を構築することを示唆しています。
AIガバナンスと責任のバランス
AIの進歩に伴い、そのリスクに対する議論も加速しています。以前の配信では、AIが起こした事故の「責任の空白」が大きな課題となっていることが取り上げられました。
EUでは、AIを製品と明示し、物理的損害から心理的被害までを補償対象とする改正製造物責任指令の適用が2026年12月から始まります。このルールは、被害者救済を容易にする一方で、過度な規制がスタートアップの開発意欲を削ぐ可能性もあるため、イノベーションと救済の両立が課題となっています。
生成AIによる雇用の変化についても、過度な懸念や楽観論に陥るのではなく、変化を前提に、技術と倫理・社会制度のバランスを取りながら、企業や政府が主体的に仕組みづくりを進めることが求められています。
ここがポイント👌
仕事の有り様が変わるのは確かなため、企業や政府は生成AIを受け身で待つのではなく、仕事を補完し生産性を向上させる仕組みづくりを進めることが必要です。
この記事をまとめると…
生成AIが「仕事が消える」という議論について、世界の経済学者の間でも意見は分かれています。マイクロソフトの分析では、コーパイロットの導入によりメール作成時間が30%削減されるなど、働き方の効率化は裏付けられました。しかし、雇用については、コピーライティングなど一部の職種で新規採用が減少する一方、プログラマーの採用は増加するなど、「丸でありバツ」の影響が出ています。また、経済全体への生産性増加の影響についても、アセモグル教授が「最大0.66%」と控えめな推計を出すなど、評価は分かれています。いずれにせよ、企業や政府には、AIを受け身で待つのではなく、仕事を補完し生産性を向上させるための仕組みづくりを進めることが求められています。
配信元情報
- 番組名:日経プライムボイス
- タイトル:生成AIで仕事が消えるは言い過ぎ?。世界の経済学者はこう考える
- 配信日:2025-09-10


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