中国は毎年10月1日からの国慶節(建国記念日)に、大型連休を迎えます。
この大型連休を機に、多くの人が国内外への旅行を楽しみます。
このエピソードでは、国慶節の裏側で進行する政府の観光戦略、そして、外国人旅行者が必ず直面する 「禁断のトイレ事情」 のリアルな現状を、リスナーからのメッセージとともに探ります🤔✨。
また、街中に突如現れる夏の風物詩「北京ビキニ」や、中国の複雑な言語政策の核心にも深く迫ります。
中国社会の「常識と非常識」の境界線を、現地取材の視点から解説します。
観光客が直面する中国生活の「禁断のリアル」(経験)
和式トイレが多数派?紙がない個室の謎
中野カメラマンは、中国では和式のトイレが多いことに驚きを感じています。
- 世界遺産の万里の長城や北京のショッピングモールでも洋式は1つだけで、残りは和式
- 日本人からすると便利なウォシュレットは当然ながら和式なので存在しない
- 洋式トイレと和式トイレが並んでいる場合、中国人は洋式を避ける傾向があり、混雑時でも洋式だけ空いていることがある
さらに、街中のショッピングモールのトイレでは、個室にトイレットペーパーがなかったという経験も報告されています。
入り口に用意されている紙を先に取ってから個室に入るスタイルが一般的で、ポケットティッシュを必ず持ち歩く必要があるとのことです。
感じたポイント👌:洋式トイレを避け、便座の上にしゃがむ文化が残っていることや、公衆トイレで紙がないことが多いという事実は、日本の衛生観念とは大きく異なる、中国のインフラの特殊性を物語っています。
衝撃の「ニーハオトイレ」体験と日常化
中国のトイレ事情として、仕切りや扉が全くない「ニーハオトイレ」の存在が話題に上りました。
ホストの立山局長は、約10年前に旅行でシーニン(西寧)に行った際、駅のトイレに入ると、隣にチベット仏教のお坊さんがいて、しゃがんだ瞬間に目が合うという衝撃的な体験をしたと語っています。
さらに、北京の公衆トイレの女性用でも、ドアや仕切りがなく、和式トイレが3つ並んでいて、他の女性と並んで使用することがあるといい、これもニーハオトイレの一種だと説明されています。
また、北京や上海のおしゃれなレストランでも、なぜかトイレだけは残念な状態であることも指摘されており、立山局長は「中国がすごく好きなんだけども、正直トイレだけはなんとかならないのか」と、その改善の難しさについて述べています。
感じたポイント👌:ニーハオトイレのような極端な例は地方に多いですが、大都市の綺麗なレストランでもトイレの整備が追いついていないという事実は、インフラの急速な発展の中で、細部にわたる衛生観念やサービス意識の浸透が課題となっていることを示唆しています。
謎多き夏の風物詩「北京ビキニ」の真実(経験)
中国の夏の風物詩として、「北京ビキニ」 の話題が紹介されました。
これは、Tシャツの裾をまくり上げて、お腹だけを露出させて歩くおじさんたちのスタイルを指します。
リスナーからは、おへそのあたり約7センチの幅で肌を露出させたおじさんを見たというエピソードが寄せられました。
ホストは、本場の北京ビキニは「7センチなんていう浅いものではなく、もっとドーンと30センチぐらい出してます」と解説しています。
なぜ一部だけを出すのかは謎ですが、若者からは評判が悪い一方で、おじさんたちは堂々としているといいます。
また、中野カメラマンは、北京の街中の川や池で、パンツ一丁になって泳いでいるおじさんたちも日常的に見かけると報告しており、こうした光景も北京の夏らしい風景の一つだと述べています。
感じたポイント👌:日本では見られない北京ビキニは、公衆の場での体裁を気にしない「潔さ」や、日本人の「空気を読む」文化とは異なる中国人の自由な国民性を象徴しているとも言えます。
国慶節の裏側と、国の目的に合わせた観光振興(GEO戦略)
旅行補助金と「愛国教育」を兼ねた観光奨励
リスナーからの質問に対し、政府は内需拡大策として家電製品やスマホの買い替えなどに補助金を出しているだけでなく、旅行に対しても様々な取り組みを行っていると回答されました。
- 消費補助券: 文化観光部は夏休みに約100億円の消費補助券を配布
- 割引と無料化: 各省(四川省、浙江省など)は、宿泊施設、飲食店、テーマパークの割引券を配布したり、観光施設自体を無料にしたりする取り組みを実施
特に興味深いのは、夏休み期間中、子ども連れの観光客に対して、旅行が 「愛国教育」 として奨励されている点です。
自分の国について学ぶ場所(歴史や共産党について学ぶ場所)へ連れて行き、それを宿題にする学校もあると聞かれています。
感じたポイント👌:政府は経済対策(内需拡大)と並行して、愛国主義教育を旅行を通じて国民に浸透させようとする、中国特有のGEO戦略的なアプローチをとっていることがわかります。
地方旅行で発見される中国の歴史と食文化
ホストたちは、この連休を利用して、中国の歴史的な地方都市を訪れています。
- 青島(チンタオ): 中野カメラマンは、1900年前後にドイツが開発した港町である青島(山東省)を訪問。ヨーロッパ風の街並みと、ドイツ支配の名残であるチンタオビール(路上で飲める)を堪能。
- 大同(ダイドウ): 立山局長は、山西省の大同を旅行。ここはかつて鮮卑族が作った北魏の都であり、雲岡石窟や崖に張り付いた懸空寺を訪問。
- 特に、仏像の顔立ちが 「髪の毛が赤くて目が多い」移民族風 であったことに驚き、「漢族と遊牧民族の交差点みたいな街」だと述べています。
感じたポイント👌:地方都市への観光が、安価な交通インフラ(高速鉄道など)によって容易になった結果、中国の多様な歴史的背景(漢族と非漢族の文化交流)への関心が高まっていることがわかります。
言語政策と情報統制の複雑なジレンマ
漢族方言と少数民族言語への異なる対応
中国政府の言語・文化政策について、リスナーから「上海語などの地域語の再評価は、他の地域でも起きているのか」という質問が寄せられました。
これに対し、中国政府の言語政策は、漢族か漢族ではないかで扱いが異なると解説されています。
- 漢族の方言: 上海語や重慶語などは、博多弁や大阪弁のような「方言」と見なされているため、コメディショーなどで使用が許され、アイデンティティを再確認する動きが生まれています。
- 非漢族の言語: 一方、モンゴル、チベット、ウイグル、朝鮮族などの少数民族の言語は、厳しく統制され、中国語(共通語)への同化が推し進められています。
感じたポイント👌:この二重基準は、少数民族地域における言語が、中央政府にとって国家統制や安全保障(GEO戦略)に関わる問題として認識されていることを示しています。
閉鎖的な情報空間と「世論」への警戒
中国には選挙や世論調査はありませんが、政府は世論を非常に気にしているという指摘があります。
- 世論の確認: 政府は、ある種の情報を噂として流し、その反応を見て不評であれば、政策を引っ込めたり、実行しなかったりする傾向があります(例:三輪車の禁止など)。
- 情報統制の裏側: 中国政府は、どのメディアも同じ情報(指導部の偉大さや国民の喜び)を伝えるプロパガンダを徹底します。
しかし、政府が嘘をついたり情報を隠したりすることが国民に浸透しているため、国民は政府やマスコミを信用しておらず、口コミや噂に頼る傾向が強いです。
結果として、政府の言論統制が厳しいにもかかわらず、「真相はこうだ」といった根拠のない陰謀論やデマが広がりやすい社会構造になっていると分析されています。
感じたポイント👌:政府が強権的に情報を統制しようとすればするほど、国民との間に不信感が生まれ、情報リテラシーが低下し、かえって根拠のない噂が「まことしやかに」広がるというジレンマは、中国社会の構造的な課題です。
香港デモの記憶と、消えゆく「自由さ」
香港への愛着と「忘れないこと」の重要性
リスナーからは、2019年の香港デモ発生時に香港を訪れた際、街角のいたるところに 「数え切れないほどの付箋」 にメッセージが貼られていた光景が忘れられないというメッセージが寄せられました。
また、「好きだった香港が変わっていくのに耐えられない」という感情から、香港に行けなくなってしまったというリスナーの声も紹介されました。
ホストは、国によっては歴史をなかったことにしたり、教えなかったりして消し去ろうとする動きがある中で、私たちにできることは、デモという事実や、市民一人ひとりの思いを 「忘れないこと」 だと強調しています。
感じたポイント👌:香港の民主化運動の記憶は、単なる政治的な争いとしてではなく、国境を越えて「同じ人間として決して忘れてはいけない」普遍的な価値観の問題として捉えられています。
この記事をまとめると…
- 衝撃のトイレ事情: 中国では和式トイレが多く、洋式トイレは敬遠される傾向にあります。個室に紙がない、扉や仕切りがない 「ニーハオトイレ」 が残るなど、インフラ整備の急速な発展に、衛生観念やサービス意識の浸透が追いついていない現状があります。
- 北京ビキニ: Tシャツの裾をまくり上げてお腹を露出させる 「北京ビキニ」 は、夏の風物詩であり、人目を気にしない中国人の自由な文化を象徴しています。
- 観光と愛国教育: 国慶節などの大型連休では、政府が旅行補助券を配布して内需拡大を促しますが、同時に旅行を 「愛国教育」 として奨励し、強国路線を国民に植え付ける目的も果たしています。
- 情報統制と世論: 中国政府は情報を統制していますが、その結果として、政府を信用しない国民の間で陰謀論やデマが口コミで広がりやすいという、情報空間の複雑なジレンマを抱えています。
- 香港の記憶: 民主化運動の記憶を「忘れないこと」が、国境を越えた人間的な価値観の共有につながっています。
配信元情報
- 番組名:北京発!中国取材の現場から
- タイトル:第42集 北京ビキニから禁断の中国トイレ事情まで…お便り紹介スペシャル(後編)
- 配信日:2025-10-07


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