【三菱商事撤退】日本の洋上風力発電計画を停滞させた「制度設計」の失敗

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三菱商事が洋上風力発電から撤退し、500億円超の損失を出したニュースは衝撃的ですね。政府が脱炭素の柱と期待するこの事業が、なぜ暗礁に乗り上げてしまったのでしょうか?😟 背景には、あまりに安すぎた「売電価格」という制度設計の失敗があります。今回の配信では、この撤退ドミノの懸念と、日本の再生可能エネルギー推進が直面する構造的な課題を深掘り!この記事を読めば、GX戦略の現状と、国を挙げた対策の必要性がスッキリわかりますよ👍。

今回の配信内容🎧

今回の配信では、三菱商事が秋田県と千葉県の沖合で計画していた洋上風力発電事業から撤退した事実について解説します。政府が再生可能エネルギーの柱と位置づける洋上風力発電が、資材価格の高騰と安すぎる売電価格の「制度設計の失敗」により、拡大計画そのものが停滞する恐れがある現状に焦点を当てます。さらに、再算性を高めるために政府に求められる入札制度の見直しやサプライチェーンの強化といった、日本のGX戦略が直面する構造的な課題について深掘りします。


脱炭素の柱「洋上風力」に吹き荒れる逆風

三菱商事、500億円超の損失で事業撤退の衝撃

政府が「将来の主力電源に育てる」と期待をかける洋上風力発電ですが、その推進役となるべき企業が事業からの撤退を決めました。
先月27日、三菱商事は、秋田県と千葉県の沖合で計画していた洋上風力発電の事業から撤退することを決めました。
この決定の衝撃は大きく、国の風力発電の拡大計画そのものが停滞する恐れがあります。

安すぎた売電価格とインフレの直撃

三菱商事が撤退に至った経緯を見ると、制度設計の初期段階で問題が生じていたことがわかります。

  • 経緯:政府がこれまで3回行った大規模入札(ラウンド1)で、三菱商事は3つの海域を総取りしました。
  • 初期の疑問:しかし、落札した際の電気を売る価格、売電価格が業界水準よりあまりに安かったため、「本当に実現できるのか」と疑問の声が上がっていました。
  • 撤退の直接原因:その後、世界的なインフレにより風車などの資材価格が高騰したことで、三菱商事は500億円余りの損失を出し、事業採算が合わないとして撤退に追い込まれました。

経営体力があるはずの三菱商事が撤退したインパクトは非常に大きく、懸念されているのは、ラウンド2・3の落札企業が相次いで撤退に動く「ドミノ」の発生です。

ここがポイント👌

三菱商事の洋上風力事業撤退は、売電価格が業界水準より安すぎたことと、資材価格の高騰による採算性の悪化が原因であり、500億円余りの損失を出し、国の拡大計画の停滞を招く恐れがあります。

失敗の原因は「安すぎる価格設定」という構造的欠陥

目標達成を危うくする「価格維持」の限界

政府は、洋上風力発電を脱炭素社会の実現に向けた重要な柱と位置づけています。

日本のエネルギー基本計画では、2040年度に洋上風力の比率を4割から5割に高めることを目標としており、風力発電の比率を2023年度時点の約1%から最大で8%にすることを目標としています。

しかし、今回の三菱商事の撤退により、この目標を達成できなければ、2050年にカーボンニュートラルを目指す国の温暖化ガス削減の目標達成にも影響を及しかねません。

政府は、三菱商事が総取りしたラウンド1についても、電力市場価格を元に補助金を決めるFIP制度に変更できる方針を示しましたが、これが業界関係者から「三菱商事に有利な変更ではないか」と議論が起こるなど、制度設計の迷走が指摘されています。

制度設計の失敗は他分野にも共通する課題

この洋上風力発電で露呈した問題は、単なる一つの事業の失敗に留まらず、日本が抱えるGX(グリーントランスフォーメーション)や産業構造の構造的な課題に通じています。

例えば、来年度から義務化される排出量取引制度(GX-ETS)では、インセンティブとコストのバランスの難しさが議論されています。

また、日本の稲作においても、かつて価格を維持するために生産調整政策(減反政策)が行われましたが、これが競争力の強化を阻害してきたという構造的な問題が指摘されています。

洋上風力でも、安すぎる価格設定が事業採算性というビジネスの本質を見失わせた結果、事業の維持が困難になったと言えるでしょう。

ここがポイント👌

政府は2040年度までに洋上風力の比率を最大8%にする目標を掲げているものの、安すぎる売電価格は、脱炭素投資へのインセンティブとコスト負担のバランスを欠き、国の温暖化ガス削減目標達成に影響を及ぼしかねません。

再算性を高めるための「サプライチェーン」戦略

効率化の原則はインフラ維持を保証しない

海外の事例を見ると、効率化を至上とする原則が社会インフラの維持に限界をもたらした教訓があります。

イギリスでは、民営化された鉄道システムが、利益優先でインフラ投資や保守を怠った結果、サービスが悪化し、再国有化へと逆走しています。また、水道大手も破綻の危機に瀕しています。

洋上風力においても、安すぎる売電価格は、企業に十分なインフラ投資をさせず、結果的に事業そのものの撤退という事態を招きました。これは、短期的なコスト競争力だけでなく、社会基盤としてのエネルギー供給を長期的に維持するという視点が必要であることを示しています。

日本が技術的な競争力を高めるための対策

洋上風力発電は、日本に適した土地が少ないものの、太陽光や地熱より拡大余地が大きいと言われています。この可能性を活かすためには、政府は抜本的な対応を取る必要があります。

京塚編集長は、再算性を高めるために、入札の仕組みや制度の見直しはもちろんですが、根本的にはサプライチェーンの対応が不可欠だと指摘しています。

建設用の部品などを国内で安定的に調達できるサプライチェーンの構築は、資材高騰リスクを回避し、採算性を向上させるために欠かせません。これは、再生可能エネルギーだけでなく、日本の製造業全体の課題とも言えます。

環境規制の分野では、半導体や医療に不可欠な素材であるPFAS(有機フッ素化合物)について、日本は遅れているという指摘があります。脱炭素や環境規制といったGX戦略において、日本が技術的な競争力を高めるためには、洋上風力発電のように事業者の撤退を招かないための国を挙げた全方位の対策が求められています。

ここがポイント👌

洋上風力発電の再算性を高めるため、政府は入札制度の見直しに加え、建設用部品などを国内で安定的に調達できるサプライチェーンの構築が不可欠です。これは、イギリスの国有化が示すように、効率化の原則だけではインフラ維持ができないという教訓に基づく、国を挙げた対策です。

この記事をまとめると…

三菱商事は、秋田県と千葉県の洋上風力発電事業から500億円余りの損失を出し撤退を決めました。これは、政府の脱炭素の柱である洋上風力発電の拡大計画の停滞を招く恐れがあります。

撤退の背景には、入札で決まった売電価格が業界水準より安すぎた上、資材高騰が追い打ちをかけ、事業採算が合わなくなったという制度設計の失敗があります。

政府は、2050年カーボンニュートラル目標達成のため、入札制度の見直しに加え、国内での安定調達を可能にするサプライチェーンの構築を通じて、事業採算性を高めることが急務とされています。


配信元情報

  • 番組名:日経プライムボイス
  • タイトル:三菱商事の洋上風力発電撤退、日本の再生可能エネルギー推進にも逆風
  • 配信日:2025-09-24

引用情報

🟢 経済産業省・国土交通省 洋上風力合同WG資料(第38回)

タイトル:洋上風力の政策的位置付けと今後の検討の視座
概要:ラウンド1〜3の入札制度の課題、FIP制度の見直し、サプライチェーン強化の必要性などを整理。GX推進に向けた制度改善の方向性を提示。
🔗 PDF資料を見る

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